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2026.08.03
Web運用

PDFとHTML、資料の掲載はどちらにするか。クライアントに説明できる5つの目安

「この資料、PDFのまま載せておいてください」

MONJI+をご利用いただいている制作会社のディレクターの方から、こんな声をいただきました。クライアントからそう渡されると、断る根拠が手元にないまま、そのまま載せることになるそうです。

この声を聞いて、私たちが最初に思ったのは「同じことをしてきたな」ということでした。
PDFをアップしてリンクを貼るだけなら早いですし、作業した感もあります。公開した瞬間に少しだけ達成感もあります。あとから考えると、そこで終わった気になっていたのが問題でした。本当に大事なのは、載せたかどうかではなく、読む人がその情報にたどり着けるかどうかだったからです。

この記事では、資料をPDFで載せるかHTMLにするかの判断を、その場で当てはめられる手順として整理します。

PDFで載せるかHTMLにするかは、好みの問題ではなく、読む人がその情報にたどり着けるかどうかの問題です。デジタル庁は自サイトの検証結果の中で、PDFである必然性がない場合はウェブページを用意すると明記しています。判断は感覚ではなく、5つの目安をその場で当てはめて決められます。

  • PDFは、支援技術で読むための情報をあとから付ける必要があり、書き出したままでは読めないことがある。

  • 検索で見つけてもらう、更新を重ねる、一部を引用してもらう、のどれかが必要ならHTMLが向く。

  • PDFを禁止する話ではなく、必然性を先に問うという順番の話。

なぜ「とりあえずPDF」で止まってしまうのか

先に、詰まる理由を書いておきます。

PDFのまま載せる判断が続くのは、担当者の意識が低いからではありません。断る根拠が手元にないからです。

「アクセシビリティ的にPDFは避けた方がいいです」とだけ言うと、だいたい空気が固くなります。こちらも説明したつもり、相手も聞いたつもり。でも結局、「で、PDFじゃダメなんですか?」に戻る。この会話、私たちも何度かやりました。そして、だいたい説明が下手でした。

もうひとつ、PDFの問題が見た目に現れないという事情があります。画面で見るぶんには何の問題もないPDFでも、支援技術で読むと順番が飛んだり、表がただの文字の並びとして読み上げられたりします。作った本人が確認しても気づけません。見た目が整っていることと、読める状態になっていることは別だからです。

つまり、判断が止まるのは根拠と基準がないからです。ここを先に用意します。

判断の根拠になるデジタル庁の検証結果

手順に入る前に、根拠になる資料を押さえます。

デジタル庁は、自サイトのウェブアクセシビリティ検証結果を令和8年3月31日に表明しました。対象は digital.go.jp 以下の全ページで、実際に検証したのは代表的なウェブページ17ページとPDF1ファイル、それにランダムに選んだ30ページのウェブページと9ファイルのPDFです。

目を引くのは、改善に向けた取り組みとして書かれている一文です。

PDFである必然性がない場合は、ウェブページを用意する。

自分たちのサイトの検証結果として、この方針をはっきり書いています。PDFを禁止しているわけではなく、必然性を先に問うという順番が示されている。ここが実務にそのまま使えます。

同じ検証で挙がったPDFの課題も、抽象的な注意ではなく具体的な項目でした。

  • タグの付与、言語設定、ファイルタイトルが設定されていない

  • 代替テキスト、見出し、表、リストの構造化が足りない

  • 読み上げ順序が設定されていない

Wordから書き出しただけのPDFは、この状態になりやすいです。

出典:デジタル庁 ウェブアクセシビリティ検証結果(2025年) https://www.digital.go.jp/accessibility-statement/test-result-2025

出典:W3C PDF Techniques for WCAG 2.0 https://www.w3.org/TR/WCAG20-TECHS/pdf

掲載形式を決める4つのステップ

私たちが資料を受け取ってから公開するまでに踏んでいる順番です。

STEP 1:HTMLが向くかどうかを5つの目安で当てはめる

次の5つのうち、1つでも当てはまればHTMLで用意したほうが向いています。

  1. 検索から見つけてもらいたい。PDFも検索の対象にはなりますが、ページの中の一部分に直接たどり着かせるのは難しくなります。

  2. 中身を更新する予定がある。差し替えのたびにファイルを作り直す運用は、更新が止まる原因になります。

  3. スマートフォンで読む人がいる。PDFは紙の大きさで作られているので、小さい画面では拡大と横移動が必要になります。

  4. 一部を引用したり、コピーして使ってほしい。テキストとして扱える形のほうが、読む側の手数が減ります。

  5. 読み上げソフトを使う人が読む可能性がある。HTMLは見出しや表の構造をそのまま持てます。

STEP 2:PDFが向く場合に当たらないかを確かめる

逆に、PDFが向いているのは次のような場合です。

  • 印刷して配る前提の資料である。

  • レイアウトが崩れると意味が変わる図面や様式である。

  • 改変されずに保存されることが求められる。

判断に迷ったときは、その資料を紙で配る場面が思い浮かぶかを考えてみてください。会場で配る。印刷して回覧する。署名や押印が必要になる。そういう場面が浮かぶなら、PDFには意味があります。

逆に、誰も印刷しない、更新もある、スマホでも読まれる。それなのに「とりあえずPDFで」は、過去の私たちも含めて、少し楽をしすぎていたかもしれません。

STEP 3:PDFで出すなら4項目を整えてから公開する

必然性があってPDFにする場合も、やることが残ります。最低限、次の4つを確認してから公開します。

  1. ファイルのタイトルを設定する。ファイル名ではなく、文書のプロパティのタイトルです。

  2. 言語を設定する。日本語の文書として認識されないと、読み上げが不自然になります。

  3. 見出し、表、リストの構造を付ける。書き出し元のWordやデザインツールの側でスタイルを正しく使っておくと、あとの作業が減ります。

  4. 図版に代替テキストを付ける。読み上げ順序も確認します。

このうち3番と4番は、PDFにしてから直すより、元のファイルの段階で整えるほうが早いです。書き出したあとに手作業で付け直す前提で進めると、更新のたびに同じ作業が発生します。

あわせて、PDFの内容を要約したページを1枚用意しておく方法もあります。本文はPDFのままでも、何が書いてあるかがHTMLで読めれば、検索からたどり着ける入口ができます。

STEP 4:判断基準を公開前の確認項目に入れる

5つの目安を頭の中に置いておくと、担当者ごとに判断がばらつきます。公開前の確認項目として書き出し、掲載のたびに同じ順で当てはめる形にします。決めた理由もあわせて残しておくと、担当が変わったときに同じ議論を繰り返さずに済みます。

MONJI+は、Webサイトの公開前の確認と修正依頼を一か所にまとめておけるWeb運用プラットフォームです。PDFかHTMLかの判断基準はチェックリストに入れて公開前に見るようにし、なぜその形にしたのかという理由はWikiに残しています。掲載後に表記の直しが出たときは、画面のその場所にコメントを置いて修正依頼として渡せます。

クライアントへの説明で変わったこと

現場でいちばん難しいのは、技術の話ではなく伝え方です。私たちが説明で使っているのは、次の3つの角度です。

  • 読む人の話にする。読み上げソフトを使う人には、いまのPDFは順番が飛んで読まれる可能性があります、と具体的に言います。

  • 見つかるかどうかの話にする。この資料を探している人が検索したとき、PDFだと該当の箇所まで案内しにくくなります、と伝えます。

  • 更新の話にする。年に何回か差し替えるなら、そのたびにファイルを作り直す手間が続きます、と示します。

この分け方にしてから、会話の中身が変わりました。

  • 対応するかしないかの二択で止まらず、どの資料をどちらにするかの話に進むようになった。

  • PDFのままにする資料についても、要約ページを1枚作るという第三の選択肢が出せるようになった。

  • 判断が公開前の確認項目に入ったので、担当者が違っても同じ順で当てはめられるようになった。

アクセシビリティという言葉だけで進めると、対応するかしないかの二択になりがちです。読む人と、見つかりやすさと、更新の手間という3つに分けると、判断が具体的になります。

注意点:HTMLにすれば済む話ではない

期待しすぎないために、限界も書いておきます。

HTMLにしたからといって、それだけで読みやすくなるわけではありません。見出しの階層が飛んでいたり、表がレイアウト目的で使われていたりすれば、同じ問題がHTML側で起きます。形式を変える判断と、中身の構造を整える作業は別に残ります。

また、すでに載せてあるPDFを一度に作り直す必要もありません。よく見られている資料と、更新の頻度が高い資料から順に移すほうが、かけた手間に対して効果が出やすいです。

よくある質問(FAQ)

Q. PDFで載せるのは避けたほうがいいのですか?
A. PDFを避ける必要はなく、必然性があるかを先に問う順番が推奨されています。デジタル庁は自サイトの検証結果の中で、PDFである必然性がない場合はウェブページを用意すると明記しています。印刷して配る前提の資料や、レイアウトが崩れると意味が変わる様式はPDFが向いています。

Q. PDFは検索に出ないのですか?
A. PDFも検索の対象にはなりますが、文書の中の特定の箇所に直接たどり着かせることは難しくなります。探している情報がPDFの何ページ目にあるかまで案内したい場合は、HTMLのページを用意したほうが読む側の手数が減ります。

Q. すでに載せてあるPDFは全部作り直すべきですか?
A. 一度に作り直す必要はありません。よく見られている資料と、更新の頻度が高い資料から順にHTMLへ移すと効果が出やすいです。当面PDFのままにするものは、内容を要約したページを1枚用意しておくと入口ができます。

Q. PDFのアクセシビリティで最低限やることは何ですか?
A. ファイルのタイトル設定、言語設定、見出しや表やリストの構造付け、図版の代替テキストと読み上げ順序の確認の4つです。構造と代替テキストは、PDFにしてから直すより、書き出し元のファイルの段階で整えるほうが早く済みます。

Q. 判断基準をチームで共有するにはどうすればいいですか?
A. 5つの目安を公開前の確認項目として書き出し、掲載のたびに同じ順で当てはめる形にすると、担当者ごとの判断のばらつきが減ります。決めた理由もあわせて残しておくと、担当が変わったときに同じ議論を繰り返さずに済みます。

まとめ

  • デジタル庁は令和8年3月31日に表明したウェブアクセシビリティ検証結果の中で、PDFである必然性がない場合はウェブページを用意すると明記している。

  • 同じ検証で挙がったPDFの課題は、タグ付与と言語設定とファイルタイトルの未設定、代替テキストと見出しと表とリストの構造化不足、読み上げ順序の未設定だった。

  • 検索から見つけてもらう、更新する予定がある、スマートフォンで読む人がいる、一部を引用してほしい、読み上げソフトで読まれる可能性がある、のどれかに当てはまればHTMLが向く。

  • 印刷して配る前提の資料、レイアウトが崩れると意味が変わる様式、改変されずに保存されることが求められる文書はPDFが向く。

  • PDFで出す場合も、ファイルタイトルと言語の設定、見出しや表やリストの構造付け、代替テキストと読み上げ順序の確認は必要になる。

  • クライアントへの説明は、読む人と、見つかりやすさと、更新の手間の3つに分けると具体的になる。

掲載のたびに同じ判断をやり直さずに済むよう、5つの目安を公開前の確認項目として置いておくと迷いが減ります。

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